
私の医院に妊娠十カ月の女性が「歯茎におできができた」といって来られました。診察すると歯と歯の間にある三角形の歯茎が盛り上がっていました。
歯科医が「妊娠性エプーリス」と呼ぶ良性の腫瘍です。妊娠五か月あたりから前歯にできることが多いようです。
妊娠維持に不可欠な女性ホルモンであるプロゲステロンは、コラーゲンの分解を阻害する作用があります。よって分解されないで蓄積されたコラーゲンが、歯肉にたまって、おできができることがあります。
プロゲステロンが減る出産後には縮小または消失することも多いため、私は妊娠中に外科処置はせずに、正しい歯磨きをすすめます。出産後も縮小しない場合は切除したほうが口腔内を清潔に保てます。
妊娠中の歯の健康が話題になると「一人目の子供を生んでから歯がボロボロになってしまいました」と言う女性が少なくありません。
確かに一部の歯周病菌は、女性ホルモンの分泌量の変化で増殖することが医学的に証明されています。しかし、それでもボロボロにはなりません。妊娠中に歯の健康を損ねる大きな原因は、つわりなどで口の中のケアが不十分になったことにあるようです。
本当に歯がボロボロになるのは、女性ホルモンの分泌量が減少する更年期です。女性ホルモンには骨の添加・吸収の働きがあるため、閉経とともに女性は骨粗鬆症になりやすいのです。
骨粗鬆症というと曲がった背骨や手足の骨折などを思い浮かべるでしょうが、歯を支える骨・歯槽骨にも影響を与えます。骨粗鬆症により歯槽骨が弱くなり歯ぐきがダメージを受けると、歯周病が進行している人は口の中が健康な人よりも歯が抜けやすくなります。 |